X'mas-前編(夜昼)


赤、白、緑、
普段は静かな場所も
きらきらときらびやかな色に染まる―…



□X'mas-前編□



12月24日、今年は金曜日。

浮世絵中学校に限らず、その日は近隣の小学校、高校と二学期最後の登校日となった。

終業式を終え、体育館から教室へと向かう生徒達の足取りは軽い。

「ねぇ、カナは冬休みどっか行く?」

「う〜ん、近所の神社に初詣に行くぐらいかな。そういう鳥居さんは?」

「あたしは…」

その中に、清十字怪奇探偵団として名を連ねるリクオも含まれていた。

お馴染みのメンバーに囲まれながらリクオはふと窓の外に視線を流す。

「何だか雪、降りそうだなぁ」

「むっ、雪?雪と言えば雪女が有名だな。雪女というのは…」

呟いた言葉を拾われ、清継が雪女について得意気に解説し始める。

「わ、若っ!」

側にいたつららが慌てたようにリクオの制服の裾をつかんで小声で助けを求めてくる。

「大丈夫だよ。それとここで若は無しだよ、及川さん」

「あっ!」

しまったという顔をしたつららに、リクオは苦笑しながら言葉を続けた。

「今日はちょっと寄りたい所があるんだ。だからつらら達は先に帰ってて」

「それなら私も」

「まだ昼間だし、大丈夫だよ。つらら達だってやることがあるだろ?」

「そ、それはそうですが…」

ね?と、リクオはその後も言葉を重ねて珍しく一人で帰ることに成功した。

学校を出たリクオは真っ直ぐ家には向かわず、クリスマスムード一色な町中へと足を進める。

どこからかジングルベルの曲が聞こえてきて、ケーキショップの前ではこの日の為に作られたケーキが店頭販売されていた。

その店の前を通過し、リクオはあらかじめ目星をつけていた店に入って行く。

まず目に入ったのはコートやジャケット。それからセーター、長袖のシャツに。

クリスマスセールで価格も普段より安くなっている冬服が並ぶ。

「そう言えば、夜の洋服姿って見たことないな。…きっと格好良いんだろうなぁ」

残念だけど今の僕のお小遣いじゃ買えないんだよね…。

ちょっと頭の中で夜の洋服姿を思い浮かべて、リクオは店の中を歩き回る。

「あ、あった。ん〜、何色が似合うかな」

そして、目的の物を見つけると真剣に選び始めた。

「………ん。やっぱり白かな」

リクオが手にした物はオフホワイトの肌触りの良いロングマフラーだった。

「喜んでくれるかな…」

渡す相手を想って表情が緩む。とくり、とくりと鳴る胸にマフラーを抱き、混雑するレジへと足を向けた。



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